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夢を語りだしたらとまらな い。アイデアを思いついたら即 行動。しかし,広い視野を持ち 客観的に物事を判断するクール な面もあわせ持つ。そんな星野 さんを「研究」へと突き動かす 原動力は「誰もやったことがな いことをしたい」という想い。

「だめならだめでいい,でも誰も成功していな いからやろう。これが僕のモチベーションなので す」。星野さんは現在,カリフォルニア大学アー バイン校で人工抗体をつくる研究を行っている。 抗体はウイルスや細菌など,からだの中へ侵入 した抗原を退治する生体物質。特定の抗原とだけ ぴったりと結合する。これは生物の長い進化の中 で生命を守るためにつくり出された,すばらしい しくみなのだ。「人工的に抗体をつくることは誰 も成功していない。毎日ワクワクしながら研究し ています」。 これまでの研究で,化学物質を合成して人工的 に抗体に似た形をつくることができるようになっ ていた。合成するときに,抗原の「型」を混ぜて おき,合成が終わった後にそれを取り除くと,抗 原にぴったりと結合する化学物質をつくることが できるのだ。しかし,人工抗体作成には,まだ大 きな課題が残されていた。作成した「抗体に似た 化学物質」が実際に働くかどうかを調べる技術が なかったのだ。

この解決策を,全くの異分野を専門にしていた 星野さんが持ち込むことになる。「自分がバイオ 分野で利用していた方法を,合成化学の分野に応 用できるのでは」と考えたのだ。「研究に行き詰 まったとき,異分野に目を向けると新たな可能性 が生まれることがある」。学生の頃からさまざま な分野の研究者と議論して,多くの事を吸収して きた。視野が広がるように努力をしてきた結果, 生まれたアイデアだった。これにより,人工抗体 研究のスピードは飛躍的に高まることになる。「ま ずは自分の専門分野のプロになること。その上で, 視野を広く持つとほかの人には真似できない,お もしろいことができるのです」。

人工抗体作成は星野さんの抱く野望のファース トステップにすぎない。生命が長い進化の過程で つくり出した生体物質。それと同じ働きを持つ化 学物質を,人の手でつくり出し,利用できる形 にすること。これが星野さんの目標である。「化 学の力で酵素や抗体を大量につくれるようになれ ば,多くの人がその恩恵を受けるようになる。そ んなふうに自分の研究が世の中の役に立ってほし い」。 今までもたくさん挑戦をし,たくさん失敗をし てきた。「今の研究も,上手くいかないことがた くさん出てくると思う。けれど,それを恐れずに 壁を乗り越えていく覚悟はできています」。失敗 を心配するのではなく,それを受け入れ原因を改 善して,最大限に進むためにはどうすればいいか を考え,日々実行しているという。誰も成しとげ たことのない「生体物質そっくりの化学物質」を つくるため,星野さんは今日も研究を続ける。 (文・松田怜佳)