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こんにちは!りょうこ博士です。
かがくじゃーなるくらぶ、今週も始めます!
部員の皆さん、世界最先端で最新の面白い論文を一緒に読んでみましょう。
今回は、Nature姉妹誌から選んでみました。
『Nature』という雑誌はサイエンス全般の論文が掲載されていますが、サイエンスの各分野に特化した雑誌もあります。それがNature姉妹誌です。
例えば、神経分野だったら『Nature Neuroscience』、物理分野だったら『Nature physics』があります。
選んだ論文は、『Nature Cell Biology』のホームページ上で5月16日に公開された論文です。
タイトル: Bcl-2 and accelerated DNA repair mediates resistance of hair follicle bulge stem cells to DNA-damage-induced cell death
(毛包幹細胞のDNAダメージによる細胞死への耐性化は、Bcl-2とDNA修復の促進により起こる)
著者: Panagiota A. Sotiropoulou, Aurélie Candi, Guilhem Mascré, Sarah De Clercq, Khalil Kass Youssef, Gaelle Lapouge, Ellen Dahl, Claudio Semeraro, Geertrui Denecker, Jean-Christophe Marine & Cédric Blanpain
概要: Adult stem cells (SCs) are at high risk of accumulating deleterious mutations because they reside and self-renew in adult tissues for extended periods. Little is known about how adult SCs sense and respond to DNA damage within their natural niche. Here, using mouse epidermis as a model, we define the functional consequences and the molecular mechanisms by which adult SCs respond to DNA damage. We show that multipotent hair-follicle-bulge SCs have two important mechanisms for increasing their resistance to DNA-damage-induced cell death: higher expression of the anti-apoptotic gene Bcl-2 and transient stabilization of p53 after DNA damage in bulge SCs. The attenuated p53 activation is the consequence of a faster DNA repair activity, mediated by a higher non-homologous end joining (NHEJ) activity, induced by the key protein DNA-PK. Because NHEJ is an error-prone mechanism, this novel characteristic of adult SCs may have important implications in cancer development and ageing.
http://www.nature.com/ncb/journal/vaop/ncurrent/abs/ncb2059.html
いかがですか?
今回の論文は、hair-follicle-bulge stem cells(毛包のバルジという場所にある幹細胞)の研究成果が書かれてあります。
お風呂で髪を洗っているとき、髪の毛をくしで梳かすとき。毎日たくさんの髪の毛が抜けているのを、目にしますよね。このまま抜け続けていたら、髪の毛がなくなってしまうのではないかと心配になりますが、でもなかなかハゲたりしません。
実は、私達の『毛』は、ある程度の期間伸びると抜けてしまい、同じ毛穴から新しい毛が生えてきます。
毛穴の奥の毛根を包み込んでいる部分のことを毛包といいますが、ここは毛髪を支えたり新しい毛髪を生み出したりする大切な場所です。
この毛包の中のバルジ(膨らみという意味)という部分に、新しい毛髪の元になる細胞があります。この細胞のことをhair follicle bulge stem cells(毛包幹細胞)と言います。

Fig.1 Am J Pathol. 2009 March; 174(3): 715–721. Fig.1 より転載
B. 毛髪の毛包部分。赤の塊がバルジという部分で、ここに毛包幹細胞(stem cells)がある。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2665733/
毛包幹細胞の周囲にある表皮の細胞などは、紫外線や化学刺激などの外界からの様々な刺激にさらされると、細胞に異常が生じて細胞が死んでしまいます。
しかし毛包幹細胞は、同じような刺激にさらされても死んでしまうことなく、再び新しい毛髪などを生み出していきます。
なぜ、毛包幹細胞は死んでしまわないのでしょうか?
今回の論文では、外界からの刺激を受けた毛包細胞が、死んでしまうことなく異常を素早く修復する方法を明らかにしました。
もう一度タイトルを見てください。
Bcl-2 and accelerated DNA repair mediates resistance of hair follicle bulge stem cells to DNA-damage-induced cell death
主語のふたつ(Bcl-2 と accelerated DNA repair)によって、毛包幹細胞が死なないようにするという意味のタイトルです。
日常的にはあまりないことですが、実験的に毛包幹細胞に紫外線や化学物質による刺激を与えると、Bcl-2というタンパク質が細胞の中で増え、もともと細胞が持っている自殺を促すプログラムの発動を止めます。それと同時に、毛包幹細胞の中では、細胞に起きた異常の治療(DNAの修復)が急速に行われることがわかりました。その結果、毛包幹細胞は異常化せずに、再び新しい毛髪を作り出すことができるのだと結論付けています。
毛包幹細胞には、大事な毛髪を常に作りだし続けるための、特別なしくみがあったのです。毎日たくさんの髪の毛が抜けてもハゲてしまわないのは、この毛包幹細胞の力強い生命力のお陰なんですね!なんだか、この小さな毛包幹細胞を応援したくなりました。
今週は、小さな細胞の世界をのぞきこめるような論文を選んでみましたが、いかがでしたか?
来週も、部員の皆さんが新しい世界に出会えるような論文を探して紹介したいと思います。
それでは、また来週。
りょうこ博士と一緒に、最新科学論文に出会いましょう!