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なぜ蚊に刺されやすい人と刺されにくい人がいるのか、キャンプや花火などで盛り上がったことはありませんか? 蚊の専門家は体温の高さや汗の量などを研究してきていますが、近年、この分野では体臭が注目されてきています。今回は、人の体臭と蚊の行動について研究した例をご紹介します。
メスのマラリヤ蚊が好きな「あの体臭」
蚊の中でも熱帯に生息するマラリヤ蚊は、現在でも発展途上国でマラリヤ感染症を引き起こすことがある危険な生物です。
アフリカでは子どもを中心とした約80万人が毎年マラリヤで亡くなっているのが現状で、これらの国々ではマラリヤ感染の予防に関する研究が熱心に行われています。
体臭とメスのマラリヤ蚊の行動について大いに注目されるようになったのは、2011年のビル&メリンダ・ゲイツ財団と Grand Challenges Canadaの共同助成研究成果の発表からです。
この研究では人間の足の臭いを化学合成した液体で再現し、その液体を実際にメスのマラリヤ蚊を使って実験したところ、本物の足の臭いより約4倍もおびき寄せられることが確認されました。
この結果を踏まえて、オランダとアメリカの研究チームは、蚊に刺されやすい足の臭いについて研究しています。
彼らはアフリカのリベリア共和国でマラリヤ蚊を集めて飼育し、体臭の違いがメスの蚊の行動にどのように影響するか研究しました。
協力してくれるボランティアをあらかじめ約50人募集しメスのマラリヤ蚊を使って実験しています。
ボランティアのほとんどは白人男性で、アジア系とヒスパニック系の男性が1人ずつ参加しています。
実験前にボランティアは体臭が大きく変わらないように、飲酒をしないこと、シャワーを浴びること、ニンニクを食べないこと、などのルールを守ってから実験に参加しました。
また体臭の条件が全員同じになるように、ボランティアは研究チームから渡された同じ靴下を24時間、履き続けて実験に臨んだのです。
メスのマラリヤ蚊にはわかる「臭い」の違い
実験当日、研究チームはボランティアの左足の裏に10分間ガラスビーズをこすりつけてビーズに臭いを移し、それをメスのマラリヤ蚊が入っている容器に入れて、何匹引き寄せられるかカウントしました。
また、実験協力者の左足の裏に生息する細菌の種類と密度を調べるため、皮膚の表面からの細菌のサンプル採取調査を同時に行っています。
この研究チームが細菌に注目したのは、体内ではもともと汗は無臭ですが、発汗すると皮膚上で細菌が活発に活動してさまざまな揮発性物質が発生し、それが臭いの元となることが知られているからです。
採取した細菌の一部は培養されて、細菌の多様性を調べるための実験に使用されました。
実験の結果、実験協力者の体臭によってメスのマラリヤ蚊の行動は大きく違うことが明らかになりました。
協力者のうち9人の体臭には蚊がよく引きつけられ、逆に7人の体臭にはメスの蚊はほとんど寄り付きませんでした。
メスのマラリヤ蚊が引きつけられやすい傾向があるのは、皮膚上の細菌の密度が高い場合と、生息している菌の多様性が少ない場合だったのです。
菌の種類については、ブドウ球菌の密度と蚊の引きつけられやすさには相関関係がありましたが、その他の種類の細菌とはあまり関係がないようです。
私たちにも出来る予防で、マラリヤ感染を防ごう
今回の研究結果から、人間の皮膚上に生息する細菌の密度、種類、多様性によって、メスのマラリヤ蚊の引きつけられ方が違うとわかりました。
皮膚上の細菌の種類や多様性は、本人にはどうすることもできませんが、足の臭さや細菌の密度は、皮膚を清潔に保つことで低く抑えることができるはずです。
これから蚊に刺されてマラリヤにかかりにくくするためにも、体を清潔にする指導が発展途上国で行われるかもしれませんね。
またメスのマラリヤ蚊をおびき寄せて退治する製品が早く開発されるといいと思います。
たとえば、蚊がよってくる物質入りの蚊取り線香があれば、熱帯の国々の方に大いに役立つはずです。
もっとも、足の裏の臭いがする蚊取り線香は誰も買いたがらないので、そこはハーブの香りなどで上手にごまかしてくれると嬉しいですね。(文・黒澤 勝彦)
<参考文献>
1) 'Dirty sock smell' lures mosquitoes to a sticky end , By Susannah Palk for CNN. August 2, 2011
2) Verhulst, N. O. et al., Composition of Human Skin Microbiota Affects Attractiveness to Malaria Mosquitoes, PLoS one, e28991, 6(12) (2011)