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意外?!アリの巧みな統制方法

  • (2010/01/24)
  • カテゴリー: General
こんにちは!仲村達弥です。みなさん、どこにでもいる生き物といえば何を思い浮かべますか?僕はアリだと思います。家の中にもいれば庭先、道端や草木の上、それに山にでかけても必ず見ますよね。しかし、身近にたくさんいるはずの昆虫ですが、その生活というのはあまり馴染みがないと思います。そこで今回は、身近だけど身近じゃないアリの知られざる世界をのぞいてみましょう!



■大所帯での生活には「統制」が必須!
アリは土の中にコロニーとよばれる巣をつくり生活しています。そこではしっかりとした役割分担がなされていて、卵を産み続ける女王アリや、餌の収集や子ども達の世話する働きアリなどがいます。女王アリはひたすら産卵し続けるのでコロニーはどんどん大きくなります。
すると…そこには「統制」が必要になってきます。多い場合ですと、数千匹を越えることもあるので、みんなが好き勝手にしていたらとても生活は成り立ちません。ではいったいどうやって、大所帯の統制をとっているのでしょうか。



■統制のとれた行動は匂いのおかげ?!
そこで登場するのが「フェロモン」です。これは通常腹部から分泌される匂い物質で、他個体への信号を送るのに役立っています。例えば、行列を作る際にかかせないのが「道しるべフェロモン」です。お尻からこの匂い物質を出すことで、他の仲間にこの匂いをたどれば餌が見つかると教えてあげているわけです。他にも、敵の来襲を仲間に知らせるための警報フェロモンや、階級分化フェロモンと呼ばれるものもあります。この匂いは、女王のみが出すことができ他のメスの生殖能力を抑える働きがあります。生殖を抑制されたメスアリは働きアリになるため、この匂いのおかげで分業が成り立っているというわけです。このように、アリは真っ暗な巣の中でもフェロモンという匂いを駆使して統制をとっているのです。



■統制にはもうひとつ!体の表面のあるもので…
そして、もうひとつ、アリの統制に重要なものがあります。それは「体表炭化水素」という匂い物質です。この物質は、以前のリバコミにも載っているのですが(大家族で暮らす小さな侵略者)、コロニーごとの組成の違いによって巣の仲間を認識しあうのに役立っています。体中に塗られた匂いが一緒に住む家族のIDになっているわけです。
さらに、この匂いは同一のコロニー内でも時間とともに変化することがわかっていて、仲間同士の口移しやグルーミング(身づくろい)を頻繁にすることよって巣内で同一の状態に維持されています。これによってより明確に巣仲間を識別できるようになっているのです。ですので、他人の巣に間違って入ることもないですし、自分の兄弟以外を育てることもありません。



■匂いが重要であるがゆえに
このようにフェロモンや体表炭化水素などの匂い物質によってアリは統制をとっています。しっかりした統制のようにみえますが、そこには裏をかく輩もいます。その名もサムライアリです。
このアリはクロヤマアリのコロニーを襲い、奴隷として身の回りの世話をさせることで知られていて、そのため自分では育児をすることはおろか餌を食べることすらできません。名前とは裏腹にまったく武士道精神のないアリですね。しかし、匂いによる巧妙な巣仲間の識別方法があるのにもかかわらず、なぜクロヤマアリは別種の世話をしてしまうのでしょうか。
サムライアリはまずコロニーに侵入するときに強力な毒ガスを噴出します。この毒ガスは通常の警報フェロモンよりも強い効果があるため、コロニーはまたたくまにパニック状態に陥ります。そんな中をサムライアリの女王アリはどんどん奥に進み、やがて、その巣の女王アリと刃を交えます。

勝利したサムライアリは、なんとその巣のIDである炭化水素を手に入れることができます。これは、元々サムライアリは固有の体表炭化水素をもたず、接触によって簡単に別種の体表炭化水素を得ることができるためと考えられています。すると、あわれクロヤマアリは別種の女王をその匂いから同じ家族だと勘違いをしてしまいます。そして、全然種類もコロニーも違うサムライアリの世話をしてしまうのです。
巧妙な匂いのIDが、かえって悲惨な結果を招いてしまっているわけです。このようにサムライアリは、アリの世界で重要な匂いを巧みにあやつっていたのです。



■身近な生き物、アリに思いをはせよう
思いのほか匂いが重要なアリの世界は、いかがだったでしょうか。行列を作るための道しるべフェロモンや、コロニーごとに違う炭化水素などを駆使して、何千もの家族が一様に生活しているのです。最も身近であろうアリ、ぜひ彼らにも思いをはせてみてはいかがでしょうか。(九州大学大学院 仲村達弥)

【参考文献】
・アリの生態 ふしぎ見聞録 技術評論社 久保田政雄 著
・動物の生き残り術 共立出版 比較生理生化学会 編
・身近なムシのびっくり新常識 サイエンス・アイ新書 森昭彦 著
・尾崎まみこ・西田健 (2007)「アリの嗅覚・新たな側面-社会性がもたらすケミカル識別に関して」, 『バイオメカニズム学会誌』, Vol. 31, No. 3
・Regnier, F.E. and Wilson, E.O. (2005) Chemical Communication and "Propaganda" in Slave-Maker Ants, Science, 172, 267-269
・アリの世界(生き物の謎と神秘(石川誠男随筆集))


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