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「地球温暖化」という言葉は、ほとんどの方が聞いたことがあると思います。温暖化が進行すると北極や南極の氷が溶ける、異常気象で台風が増えるなどと言われていますが、意外にも、もうすでに暑さが私たち人間の「食」に大きな影響を与えていることがわかりました。
小麦畑を宇宙から観察する
小麦・米・トウモロコシは三大穀物と呼ばれ、世界で毎年それぞれ数億トンが生産されています。
このうち小麦は、人口増加と経済発展が著しいインドで、ナンやチャパティなどの伝統料理を作るために欠かせない食物です。
スタンフォード大学のDavid Lobell氏を中心とする研究グループは、NASAの地球観測システムで8日ごとに撮影された2000~2009年の衛星画像を解析し、インドの穀倉地帯であるガンジス川流域「色の変化」から年ごとの小麦の収穫量を推定しました。
彼らが衛星写真を使用したのは、インドのような発展途上国の貧しい地域では正確な収穫量の全容がなかなか公表されないからです。
この地域では毎年、11月に冬小麦を植えて、気温が上がる春に収穫を行っています。
順調に小麦が育てば、種をまいた後に芽が出て穀倉地帯が緑となり、やがて実をつけて収穫時期には穂の薄い茶色に染まる様子を観察できるはずです。
ただし、インド北部は、世界的に見ても温暖化が原因と思われる気候の変化が激しい地域。
近年では、3月から6月にかけて熱波がたびたび観測されるようになりました。
熱波による気温の急激で大幅な上昇が起これば、植物である小麦にも当然ながら影響することが予想さます。
緑が失われていた穀倉地帯の小麦畑
衛星画像を解析したところ、熱波があった年は、小麦畑が緑色である日数が短くなることがわかりました。
緑色の日数が短くなるということは、小麦が十分に実をつける前に光合成を止めて早く枯れ始めたということを示しています。
その年は、収穫量が大きく減少していることになるのです。
特に、熱波によって平均気温が34℃以上となると、この現象がよく起きることがわかりました。
また熱波で損害を受けた量を計算したところ、より涼しい国のデータを元に作られた従来のコンピューターモデルの予測より、約50%も多いと報告しています。
小麦はもともと、中央アジアや西アジアの高地が原産地だと考えられており、ガンジス川流域よりも気温が低い地域の植物です。
ある程度の暑さには耐えられますが、夜間も34℃以上の状態が続くと、この暑さに耐える機能が傷ついてしまう可能性があるという報告もあります。
平均気温がもともと高いガンジス川流域では、熱波に教われると簡単に34℃を超えてしまうため、多くの小麦が熱波の暑さに負けてしまうのでしょう。
温暖化時代を生き抜くために対策援助を
ガンジス川流域には貧しい地域が多く、流通経路もまだ十分に発達していません。
おそらくこの穀倉地帯の農民たちは、熱波で小麦の収穫量が少なくなっても、農業をやめない限りは同じ種類の小麦を次の年にも植えるでしょう。
しかし、人口が増え続けているこの時代に、熱波の被害を受けやすい種類の小麦を毎年植えてしまえば、主食の原料の供給が不安定になって、社会や経済も不安定になることが避けられません。
現代のようなグローバル時代に、インドのような大国で社会が不安定になれば、われわれの生活にも影響が出る可能性があります。
彼らがこの地域で熱波に耐えながら小麦農業を続け、収穫量を増やせるようにするには、品種改良で暑さに強い小麦を開発して植えるか、早く成長して熱波が来る前に収穫できる小麦を開発しなければなりません。
しかし、農作物の品種改良はそう簡単なことではないので、品種改良の高い技術を持った研究者が求められていると考えます。
今後は、先進国の技術を応用した小麦の品種改良研究が重要な助けになるかもしれませんね。
(文・黒澤 勝彦)
<参考文献>
1) B. L. David et al., Extreme heat effects on wheat senescence in India, Nature Climate Change | Advance Online Publication, NCLIMATE1356, (2012)